Opinion  Housekeeping (中国新聞『でるた』投稿)  Cat

 十数年前に観た「セブン」というサイコサスペンス映画の1シーンが印象的で、今でも心に残っている。それは定年間近の独身の老刑事が同僚から「定年後はどうするんだい?」と聞かれて軽いノリで「故郷でHousekeepingでもして暮らすよ」と言うシーン。

瞬間的に私もいつか同様のことを問われたら、同じことを言おうと思った。工作好きの私にとっての「Housekeeping」とは家事もさることながら、言葉通りの「家の保全」。自分同様の古い家、造作などを修理しながら細々と余生を送り、やがて来る寿命を迎えようというわけである。

そのための家としては築百年クラスの木造で、造作は薪で炊くかまど、五右衛門風呂、水源は裏山の岩清水(名水を希望)が理想的。食事はメインとしてまわりの土地に野菜を植えておけば老人ではおおむね充分であろう。さらに、近くの清流でアユやイワナを捕ることができればベストといえる。

また、鶏を数羽飼ってタマゴを産ませるのもよいアイデアかもしれない。しかし、ときどき里に下りて酒、蛋白源、米などを購入する必要もなくはないだろう。さらにペットの老犬も一匹欲しいところだ。もちろん空調などは全く不要であり、夏はより暑いほど、冬はより寒いほどうれしい。照明も日の出に起床、日没に就寝を原則とするので必要性は薄い。

宇宙空間のけた外れた巨大さや星の一生の膨大な時間の観点からみれば、地球や私の寿命などは塵ほどの小ささや一瞬とも思える時間にしか過ぎない。いずれ迎える余生は好きに生きたいと考えている。