最近胸が張るようになり乳房をさわると白濁した液体が出てきます。妊娠してるわけでもないようなのに、心配です。女性ホルモンとの関係で誰もが通る道なのでしょうか?良きアドバイスください。



女性の体はよくできていて、乳汁の分泌はお産のあと、生まれた子供が母乳を飲む間だけ分泌されるようなしくみが体内に働いています。すなわち子供が生まれてから断乳するまでの間だけ母乳が必要なわけで、それ以外の時に乳汁が出ると不必要なだけでなく、定期的に乳房が張ってきてとても不便なことになります。

 乳汁分泌のメカニズムは簡単にご説明すると次のようになります。妊娠中はエストロゲンという女性ホルモンが胎盤から血液中に大量に分泌されているわけですが、お産のときに胎盤が娩出するとともにそのエストロゲンの影響は急激に消失し、乳汁分泌おこりやすくなります。さらに授乳の際の乳頭を吸う刺激が加わり、頭の中の下垂体から乳汁を作るのに必要なプロラクチンというホルモンの分泌が高まります。このプロラクチンは乳汁を作る働きと共に、卵巣の働きをおさえる作用もあります。したがってお産の後は乳汁は出るけれども、月経や排卵のない状態がしばらく続くことになります。1〜2年母乳を飲ませて、断乳の時期に子供が乳頭を吸わなくなれば、刺激がなくなり自然に乳汁分泌もなくなり、月経や排卵も正常化することになります。

 以上はお産に関連して乳汁がでる話なのですが、おたずねのようにお産や妊娠とは無関係に乳汁分泌が起こることがあります。これは「乳汁遺漏症」と呼ばれます。原因はプロラクチンの過剰分泌が起こっており、その程度によっては乳汁分泌以外に、卵巣機能不全、月経異常を伴っている方も多いものです。乳汁分泌の程度がわずかで、月経が順調で、理想的には基礎体温を調べて低温相→高温相の2相性となって排卵もあるような方は経過を見ているだけでよいと思います。しかし、乳汁分泌が多量だったり、月経不順、基礎体温が低温1相性で無排卵が疑われる、不妊といった方はこの乳汁遺漏症を疑って、精査する必要があります。

 乳汁遺漏症が疑われる方に対しては、まず問診によって薬剤によるプロラクチンの過剰分泌かどうかのチェックが必要となります。ある種の胃腸薬、抗潰瘍薬、抗うつ薬、向精神薬は主作用以外にプロラクチンの過剰分泌を起こすものがあります。

 次に血液検査でプロラクチン値を測定するのですが、プロラクチンというホルモンは1日の中でも変動が激しく、一般的に夜間に上昇し、食事、運動、ストレスなどでも変化するとされていますので、単に1回だけの採血では判断できないこともあります。その場合は下垂体を刺激する別のホルモン剤を注射してその後にプロラクチンの検査をすることもあります。プロラクチンの値を参考にして、その程度によっては脳神経外科でプロラクチンを分泌する下垂体の検査を行うこともあります。

 治療については薬剤服用によるものであればそのままで様子を見ることもありますし、担当医と相談して薬剤変更をすることもあります。薬剤服用によるもの以外についてはプロラクチンの分泌をおさえる薬を服用することになります。脳神経外科で下垂体の異常が見つかった場合にもプロラクチンの分泌をおさえる薬を飲むことがほとんどですが、ごくまれに下垂体に対する手術療法がおこなわれることもあります。