Question  タバコを吸っています。今は妊娠してませんが、子供はほしいと思っています。今すぐやめたほうがよいでしょうか? 飲酒も含めて教えてください。  Cat

Answer  妊娠中の喫煙により、流産・早産や子宮内胎児発育遅延が増加することが知られています。したがって、妊娠中の喫煙は禁忌です。わが国の厚生省研究斑による調査でも、1日16本以上のタバコを妊娠の全経過中に吸っていた場合の低出生体重児および、早期産の頻度はタバコを全く吸っていない人の5倍を超えていることが示されています。妊娠初期のみの喫煙でも低体重児の出生が増加するので、妊娠が判明したらただちにタバコを中止するべきです。他の人が吸ったタバコによる受動喫煙の影響に関する明確なデータはありませんが、受動喫煙をなるべく避けるようにしたほうがよいでしょう。

また、タバコの催奇形作用は明らかではありませんが、少なくとも人工妊娠中絶を考慮する対象とはなりません。

飲酒についてはアルコールとその代謝産物であるアセトアルデヒドは胎盤を自由に通過し、母体血中と胎児血中は同一濃度となります。したがって、母体が酔っ払っていれば胎児も酔っ払っていることになり、母体が二日酔いであれば胎児も二日酔いの状態であると言えます。さらに胎児はアルコールを代謝する能力をほとんど持っていないため増幅された全身効果を受けるため、胎児は母体よりひどく酔っているということになります。そこで、妊娠中の慢性的なアルコール飲用により胎児アルコール症候群の児が生まれることがあります。アルコールとアセトアルデヒドの両方が胎児アルコール症候群の発生に関与しているものと考えられます。わが国ではアルコール中毒の妊婦が少なく、胎児アルコール症候群の発生は少ないと考えられますが、すでに報告例もあり注意する必要があります。

胎児アルコール症候群とは以下のようなものをいいます。出生前あるいは出生後の発育障害、中枢神経系の異常(神経学的な異常、精神発育遅延、知的な障害)、小頭症、眼や口のまわりの異常にもとづく特異的な顔つきなどです。

一般的にはアルコールとして1日2.2g/kg(体重当り)程度を常用すると胎児アルコール症候群が起こる可能性が高いと考えられていますが、それ以下でも起こることが知られています。アルコール中毒の母親から胎児アルコール症候群の児の生まれる確率の算出は、この症候群の診断基準の症状がアルコールに特異的なものではないため困難です。一般には数%から数十%と考えられています。

この1日2.2g/kgのアルコールとは体重が50kgの人では、ビール大瓶5本、日本酒5合、焼酎4合、ウィスキーダブル5杯、ワイングラス8杯にあたります。また、飲酒安全限界や安全時期の設定は不可能です。したがって、妊娠中はどの時期の飲酒も問題がある可能性があります。ですから厳密に考えれば、妊婦は禁酒が必要ということになりますが、現実的な問題として時にビールをコップ1杯、日本酒やワインを少々飲む程度は、妊婦の精神衛生上からも大きな問題はないと思います。

仮に、妊娠と気づく前に(妊娠5~6週まで)に多量の飲酒があったとしても人工妊娠中絶を考慮する必要性を示唆するデータはありません。ちなみに、女性がアルコール依存症であっても妊娠前に断酒すれば、アルコールの児に対する影響はありません。卵子に関しては、受精卵の着床以後にはアルコールの毒性が胎芽に及びますが、受胎までは安全と考えられます。飲酒した男性と非飲酒女性の間に出生した児については異常は起きていないようですが、男性がアルコール依存症者だった場合は異常児がいます。